銅版画で綴る近代建築の魅力 その2

富士見丘教会 (2)
  日本基督教団に属する富士見丘教会(築1936年)は、京王電鉄と小田急電鉄が乗り入れる下北沢駅近くに存在します(世田谷区代沢2丁目)。設計者は教会員の加藤俊一(1898~1985)で、加藤は東京高等工業学校(現東京工業大学)で建築を学び、後に建設会社を経営しました。

  教会堂の外観は、急傾斜の屋根と尖頭アーチの窓を持つゴシック様式風の意匠でまとめられ、そこに胸壁(ヨーロッパの古城によく見られる凹凸のある壁面)のある塔が付きます。堂内は天井を張らずに小屋組をそのまま露にしています。このような視界を遮らない吹き抜け空間を造るには、洋式の技法が必要でした。明治時代以降、欧米から様々な小屋組(洋小屋と呼ぶ)が我が国にもたらされました。洋小屋に共通するのはトラスと呼ばれる構法で、小屋組を構成する部材は三角形をなすような骨組を持ちます。それは、水平の梁と垂直の束、母屋、そして垂木で構成される我が国の小屋組とは、根本的に異なるものでした。

  洋小屋には、キングポストトラス(真束小屋組)、クイーンポストトラス(対束小屋組)、シザーストラス(鋏組)、平行弦トラス、ハンマービームなどがあります。富士見丘教会の小屋組は、主として屋根の傾斜に合わせた2本の材(合掌と方杖)とそれらを水平方向で固定する梁から構成され、アルファベットのAの字に似た造りとなっています。そのため堂内に居る人の視線は自ずと上へと誘導されます。教会堂を鑑賞する際に小屋組の知識があれば、その技法が織りなす魅力を味わうことができます。

(教授 堀内正昭)

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