銅版画で綴る近代建築の魅力 その3

原邸

 
 旧原乙未生(ハラトミオ)邸は、本学最寄りの三軒茶屋駅から北の方向に徒歩15分ほどの高台にありました(太子堂3丁目、平成28年取り壊し)。原乙未生(1895~1990)は、陸軍中将にまでなった軍人でした。同邸は貸家として昭和3(1928)年頃に建てられ、原は世田谷在住の陸軍関係者の仲介で昭和26年にこれを買い取りました。

 大正期から昭和戦前にかけて建てられた数多くの住宅の玄関脇には洋間が設けられ、その洋間の外観は大壁造りで、傾斜の強い屋根と縦長の窓をもちました。他の和室部分は真壁造りで、緩勾配の和瓦葺きの屋根が架かり、外壁には押縁下見板が張られました。また和室の開口部は引違い窓(戸)であったため、洋間部分とは明瞭に区別できました。

 それに対して、木造2階建ての原邸の居室の多くは和室ですが、建物全体を大壁造りの洋風の外観で包み込み、急傾斜の大屋根を架けているため、外部からは和室の存在が感じられません。また、原邸の開口部は開き窓(戸)、しかも外開きなので、戸袋付きの雨戸は設けていません。さらに、洋風住宅でよく見る鎧戸(ヨロイド)もありません。このように、大屋根、白塗りの外壁に設けられた大きな開口部、そこに連続して立て込まれた縦長の開き窓(戸)が(木枠はすべて茶系のペンキ塗り)、この住宅に独特の魅力と開放感を与えています。なお、銅版画の1階左に張り出した部屋ならびに2階中央部の窓は戦後の増築によるものです。

(教授 堀内正昭)

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