銅版画で綴る近代建築の魅力 その5

聖愛教会

 小田急小田原線の成城学園前駅で下車して、しばらく東に歩を進めると、住宅街の中に白ペンキ塗りの日本聖公会聖愛教会の建物が現れます。聖愛教会がここ世田谷区砧(きぬた)に会堂を建設したのは昭和24(1949)年のことでした。その後、雨漏りが目立つようになり、15年後の昭和39(1964)年に再建したのが現在の建物になります。
 同教会の特徴は板の長手方向を水平に張り重ねた壁で、これを下見板張りと言います。この種の構法は、明治時代初期の北海道開拓に際して米国から移植され、その後全国に広まったとされます。
 前身の会堂も外壁は下見板張りでしたが、高さ約11mの尖塔が建物東側中央に付いていました。現在の会堂はこの種の塔を伴っておらず、一見教会らしからぬ佇まいですが、これにはちょっとユニークな背景がありました。
 会堂を新築する必要が生じたときに、日本聖公会の信徒であり当時立教小学校校長であった酒向誠が関わっていました。実は同じころ、同小学校校舎の改築が決められたのでした。酒向は、校舎の木材が立派で耐久力も十分にあることから、事務室と校長室を会堂の建材用に無償提供しました。つまり、現行の建物は元小学校の部材をリサイクルしたものだったのです。
 このエッチングは会堂の東面を見たもので、左に立つ鐘楼は昭和55(1980)年に付設されました。

(教授 堀内正昭)

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