銅版画で綴る近代建築の魅力 その6
東急世田谷線(三軒茶屋~下高井戸)の上町駅から徒歩2分、シュロやヒマラヤ杉等がうっそうと生い茂る敷地に旧尾澤醫院の建物があります。同医院は住居兼用として、昭和6(1931)年頃に建てられました。2階建てで、1階の東半分は診療用、西半分ならびに2階全室は家族用の領域でした。エッチングの中央と左寄りにそれぞれ玄関がありますが、前者は医院用で、後者は住まいに通じる内玄関でした。施主の尾澤章(1898~1966)は内科から外科まで手掛けていましたので、室内にはレントゲン室と手術室がありました。2階は和室を主としていますが、建物全体を洋風の外観で包み込んでいますので、和室の存在は外からは分かりません。このような造り方は、大正期からの規模の大きな洋館によく見られました。 (教授・堀内正昭)
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