銅版画で綴る近代建築の魅力 その7

 小田急小田原線の成城学園前駅で下車し西の方向に10分ほど歩くと、「神明の森みつ池特別保護区」と称する区域に至ります。ここは国分寺崖線に連なる緑地帯で、その一角に木造2階建ての旧山田邸があります。この昭和12(1937)年頃に建てられた住宅の元の所有者は米国で事業を成功させた楢崎定吉でしたが、昭和36(1961)年に画家の山田盛隆が買い取りました。

 煉瓦の門柱に近づくと、建物の南側正面と東側側面が見え、右(東)から左(西)にかけて諸室が張り出し、それに合わせて屋根の形状も変わります。屋根は褐色の洋瓦、壁は黄土色のリシン仕上げ(モルタルを引っ掻いて粗面にしたもの)、上げ下げ窓の枠を白ペンキ塗りとし、玄関周りは青味掛ったスクラッチタイル(表面に平行の溝を櫛引したもの)で仕上げ、建物の形状のみならず色彩においても変化に富む意匠が施されています。

 このように旧山田邸では、門柱からの眺めを重視した設計がなされています。正面玄関に向かって右側のタイル貼りの柱を後退させ、玄関口への視線を妨げないようにしているのも、ここからの見栄えを大切にしているからです。

 1階の左手は、ガラス戸を全面に取り付けたサンルームになっています(だたし、創建時にはガラス戸はなく開け放されていました)。その屋上はテラスとなり、2階からこの風光に恵まれた地を愉しめるようになっています。

(教授 堀内正昭)

山田邸(写真)

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