銅版画で綴る近代建築の魅力 その11

 

 東京駅の丸の内側に出て皇居方面に歩くと、その外苑のお濠端に日比谷通りがあります。同通りには、DNタワー21(旧第一生命館・農林中央金庫)、帝国劇場、明治生命館等があり、どのビルも軒高を揃えています。

 今回取り上げる明治生命館は様式建築を得意とした岡田信一郎(1883~1932)の設計になり、昭和9(1934)年に完成しました。その優れた様式美により、国の重要文化財の指定を受けています。

 同館は軒高約31m(100尺)の鉄骨鉄筋コンクリート造で、外装材に花崗岩を用いています。1階を目地のある石積風として、2階以上に巨大な円柱を立て並べます。この種の柱は古代ギリシャ建築に遡るもので、それに倣う建築様式を古典主義と呼びます。古典主義建築はわが国の明治時代以降の多くの西洋館に見られ、明治生命館は様式の上ではその最後期の作品となります。設計者の岡田は西洋建築への造詣が深く、そのディテールにも古典主義の装飾が見られます。例えば、窓格子ならびに壁面(外灯の上)に施されるメアンダー(雷文:直角に折れ曲がる直線の連続文様)は古代ギリシャで隆盛したものです。

 日比谷通りのビル群の高さが揃っているのは、軒高の上限を100尺(約31m)とする大正8(1919)年の市街地建築物法の公布によります。そのため、同通りに今なお整然とした格調ある都市景観が保たれています。

 実は、同エッチングは晴れた日中に撮影した写真を参考にしています。しかし、しっとりとした艶のある石材の質感を出したかったことと、あるかもしれない男女の出会いが脳裏に浮かび、雨の降る火ともし頃の設定にしています。

(教授 堀内正昭)

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