オープンハウスを知っていますか?

 皆さんはオープンハウスという言葉をご存じでしょうか。主催者によってその意味は異なるとは思いますが、我々建築に携わる者がこの言葉を使用する場合、それは無事竣工した建物を関係者やその知り合いの方などにお披露目する会を言います。本日はそんなオープンハウスについて、ご紹介したいと思います。

 少し前になりますが、私も構造設計者として関わった、とある建物が無事竣工し、お施主様のご厚意でオープンハウスが開催されました。私も設計者であるNAP建築設計事務所の中村拓志さんにご招待いただき、完成した建物を見学しに行ってきました。

一見すると何の建物かわからないような外観の輸入車ショールームが今日の主役。

 1階は自動車販売の為のショールームとして計画されていますが、そこはさすがは中村さん、いわゆる一般のショールームの様なガラス張りのワンルーム空間とは異なり、気に入った車を選ぶため、複数の個室の様な空間をしつらえています。もちろん展示の為の車を運び入れるため、完全な個室を用意する事は非常に難しいわけですが、建物を支える構造体(柱や壁)を少し変形させる事で(つまり普通のショールームにもあるものをちょっと変形させただけ。特殊なものを新たに付け加えたのではない事が重要!)、それらがワンルームの空間を緩やかに分節するように工夫されています。
 お店の人の立場で考えれば、既存のショールームは効率的に車を陳列できる機能的な空間ではありますが、そこを訪れるお客さんの立場で考えれば、これから先何年もの時間を共有するマイカーを、プライベートな空間でゆったりと選択したいと思うのは、尤もな話ではないでしょうか。中村さんはよくふるまいをデザインするという言葉を使用されますが、ここではまさしくそうしたお客さんの振る舞いを観察し、デザインしているように感じられました。

ショールーム全景。壁によって各展示スペースが緩やかに区切られる。

 

展示スペースから他の展示スペースを望む。所々に配置された暖炉やソファ、本棚がプライベート感を演出する。

  さて2階です。2階はオーナー住宅になっています。エントランスを入ると右手に寝室などのプライベート空間、左手にリビングやダイニングなどのセミプライベートな空間が広がる構成です。ここでも巧みな空間構成に脱帽です。建物端部のエントランス階段を長手方向(建物長辺方向)に上らせることで、階段分の奥行きを持つプライベート空間が自然と手前に確保され、残りの深い奥行きが全てリビングやダイニングなどのセミプライベートな領域に割り当てられています。

 柱や壁の構成は1階同様となっており、セミプライベートな空間が緩やかに分節されています。緩やかな分節は空間の全容を見え隠れさせ、要所要所に配置された光庭の演出とともに、奥行きのある空間に一段と広がりを与えています。なお突当たりにはテラスがあり、その先には屋上へといざなう外部階段があり、さらなる空間の上昇性も演出しています。

住戸エントランスホール。右手の木壁の裏にはプライベートスペースが、左手開口部の先にはLDKが広がる。
 

リビング越しにダイニングスペースを望む。テラスの先に屋上へと誘う階段が見える。

  このように雑誌などに掲載された写真からは想像しえない貴重な空間体験を、オープンハウスは与えてくれます。実際に建物を設計している建築家や、想像の世界でひたすら悪戦苦闘する学生にとって、オープンハウスは又とない学びの場となっています。皆さんももし身近なところでこうしたオープンハウスが開催されていたのなら、是非勇気を出して覗いてみる事をお勧めします。  (専任講師:森部康司)

※オープンハウスと称した展示・販売会もありますがそれとは異なりますのでご注意を。

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