創造的休暇を過ごすために vol.25

プロダクトコース非常勤講師の佐原です。

 

プロダクトコース非常勤講師の佐原です。
読んでほしい本というよりは知ってもらいたいことです。

「尊厳の芸術~強制収容所で紡がれた日本の心~」
(デルフィン・ヒラスナ著/国谷裕子監訳/NHK出版)

 

 

自由、権利などすべてを奪われた人たちが、
人間としての尊厳を守るために創作に没頭した不屈の精神の記録です。

 

 

19世紀末~20世紀初頭、アメリカに移住した日本人約12万人は、
太平洋戦争開戦で敵国側の人物として全財産を没収され
カバンひとつで強制収容所に送られました。
何もしてはいけない、どこへも行けない。名前でなく番号で呼ばれる屈辱。
それでも彼等は子孫の二世三世が戦後アメリカで生きて行けるよう
すべてを受け入れ我慢しました。

 

彼等を精神的に支えたのは「もの作り」でした。
わずかな材料と道具でイスを作りカーテンを吊り、紙や針金で編んだ花器に花を生ける。
洗面所のコンクリートで木の実を削り、愛する人へ贈る指輪を作る。
遠い祖国の記憶をたどって人形を作る。
創作に打込むひととき、過酷な運命や裏切りへの失望を忘れることができたといいます。

 

 

それはやがて工芸、美術の領域にまで達します。
後年日系三世がガレージの奥からそれらの作品を見つけだし
「The Art of Gaman」我慢の芸術として日米で展覧会を開催しました。

 

 

2012年、この「尊厳の芸術展」(東京藝術大学・大学美術館)を見ました。
これまでのどんな展覧会でもあれほどの感情の昂まりを覚えたことはありません。
すばらしい木彫を遺したある人は解放後二度とノミを手にしなかったそうです。
作品蒐集のさい、「せっかく世間の記憶から消えようとしているのに
寝た子を起こすようなことはするな」と反発した人もいたそうです。
優れた美術品、工芸品を生み出した日々は、
彼等には思い出したくない悪夢の一部だったのでしょう。
戦争がなければ生まれなかった芸術とは何と悲しいものだろう。

 

 

「尊厳の芸術」を知ることは、彼等をそこへ追い込んだものが何かを知ることでもあります。
われわれにとって大切なことは、それを忘れないことです。

(アメリカ政府は日系人強制収容政策の過ちを認め、1970年代に謝罪、賠償)
佐原輝夫(環境デザイン学科 非常勤講師)

illustration:佐原輝夫

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