卒業生・高橋真紀さん日本建築学会作品選集新人賞受賞!

本学科の卒業生で若手注目建築家の高橋真紀さん(1998年学部卒・2000年大学院卒、高橋真紀建築設計事務所主宰)が住宅設計作品「シナの木と白い家」で日本建築学会作品選集新人賞を受賞されました! 
 先日 母校である本学に来校された際に受賞作品についてインタビューさせていただきました。

作品外観。北側の公園より見る。(左から2軒め) 撮影:Shigeta Satoshi (Nacasa&Partners)



K:高橋さん、このたびは受賞おめでとうございます。
高橋:ありがとうございます。
K:まず受賞作品について簡単に説明していただけますか?
高橋:はい。敷地は埼玉県南部のかつて川だった土地の上に立つ住宅の建て替えです。
K:周辺はどんな場所なのですか?
高橋:まわりは住宅地ですが、どちらかというとさびしい印象の場所です。
K:さびしいとは具体的にどんな感じなのでしょう。
高橋:たとえば敷地の北側に公園があるのですが、がらんとしていて何もない感じなのです。街並みも公園に背を向けて住宅が並んでいるだけという印象です。どうしたら建物と街が共に豊かになる関係がつくれるかを考えました。
K:建物と街との関係というと?

道路側の外観。道路との間に木が植えられている。

高橋:いろいろあります。その一つはスリットです。建物を敷地の片側に寄せたり、縦長の大きな窓をつくったりすることで、建物の内外に道路側から公園まで見通せる抜けをつくりました。

室内からはスリットを通して公園の様子が見える。

K:つまり道路から建物の窓を通して公園にいる人の動きを感じることができるということですね。
高橋:そうです。建物を通して道路と公園を結びつけることを考えました。他には建物と道路の間、建物と公園の間にそれぞれ木を植えています。街を豊かにしてくれることもありますし、人の意識がそこにむかうような仕掛けにもなっています。
K:木を植えたことによって何か具体的に変わったことはあるのですか?
高橋:近所の方が木の成長を楽しみにしてくれているんです。家の中にいると公園で話をしている声が聞こえるそうで、公園でゲートボールをしているおばあちゃんがそんな話をしていたそうです。
K:街と近い建築ができたということですね。
高橋:そうですね。家の中も街と公園をつなぐような仕掛けを考えました。先ほど建物に道路側から公園に視線が抜けるようにスリットをつくったと言いましたが、家の中はそこが吹き抜けになっているんです。その吹き抜けがあることで家の中に外のような場所ができています。
K:スリット、縦長の窓ということですよね。
高橋:そうです。吹き抜けに近づくと窓を通して地面から空まで見えるんです。
K:この建物は3階建てですか?
高橋:はい。小さな敷地のため上に空間をのばすことを考えました。そして部屋の天井高さの違いなどによって、家の中に色々な場所をつくることを考えました。
K:お風呂が3階にあるのも特徴的ですよね。
高橋:そうですね。 1 階は書斎スペースと寝室、2階にリビング・ダイニング、3階に浴室です。2階の天井を高くしているのですが、そのことで3 階のお風呂に上がることが特別な場所に行くような感覚にしてくれると考えました。

室内。階段から見上げる。

K:3階の浴室からは空も見えますよね。
高橋:ええ、3 階は屋根の破風(妻面上部の三角の部分)をガラスにしています。浴室では空の近さを感じることができます。
K:「空に近い」って素敵なキーワードですね。都会にいるとなかなか「空に近い」体験ができないと思います。
高橋:そうですね。でも、都会、たとえば東京の街にも魅力は沢山あると思います。学生時代、街を見る機会を多くつくれたことが、今の自分にとってとても貴重な経験になっています。

K:
「街を見る」とはどんな体験ですか?
高橋:大学院生のときに研究室の海外調査に参加し、ドイツ、チェコ、フランスの約70都市を車でまわりました。私の研究テーマはドイツの市場広場でした。先生の運転する大きなワゴン車で移動しながらこれだと思う広場をみつけては調査し、次の日にはまた移動するような感じでした。ドイツの広場は美しいだけでなく市場とセットで街に人を集め発展した歴史があり、調査は朝市から始まり、夜終わった頃にはレストランが閉まってしまうこともあって、そういう時はそのまま広場にある市場で食料を買いキャンプ用具でみんなで料理をすることもありました。市場広場で買った食材を食べていると、思いがけずその歴史に触れられるような楽しさもありました。日本では一般の方も対象とした日本建築学会のイベントに3年続けて学生スタッフとして参加した体験が印象的でした。イベント準備のために江戸時代の地図を片手に東京の街を歩くと、日頃気が付かなかった江戸や明治の姿がどんどん見えてくる様子にスタッフ同士盛り上がってくるのがわかるくらい刺激的でした。
K:そうした体験は、都市や建築の勉強にもなりますが、人とのコミュニケーションの勉強にもなりますよね。

室内。1階から3階まで通る吹き抜け。

高橋:そうなんです。学生時代、どちらかというと人とのコミュニケーションが得意なほうではなかったのですが、調査やイベントで学外の人も含め、多くの人と関われる環境が魅力的でした。

K:
学生時代といえば大学での生活はどうだったのですか。今の自分に影響を与えた授業などありますか?
高橋:一番印象に残っているのは、設計製図の授業です。日本の女性建築家の草分け的な存在で、非常勤講師の先生でしたが、とても厳しくて、怖かったです(笑)。持ってきた作品にとことん駄目出しされました。一方で、疑問に思うことには最後までつきあってくれる先生でしたので、とても先生との距離を近く感じていました。そして自分の作品をどこまでも説明しなくてはならないという体験は、プレゼンテーション能力を磨くことにもなったと思います。
K:学生時代の経験が今の自分を支えているということですよね。
高橋:ええ、やる気のある学生には背中を押してくれる環境だったと思います。
K:お話を聞いていると優秀な学生だったという印象ですね。
高橋:いえいえ、私、とにかく物事のスピードが遅いんです。学生時代も社会人になってからもそうですが、そんな自分なのでひとつひとつ最後までやっておくことを考えていました。とにかくそうやって続けてきたんです。そうしていくうちに、時間はかかったけれど建築家としてやっていく自信が少しずつついてきました。

K:
高橋さんでもそんな感じだったのですね。なんだか勇気づけられます。今日は沢山素敵なお話をうかがうことができました。ありがとうございました。今後の活躍も期待しています。
高橋:こちらこそありがとうございました。

(准教授 金子友美)
※写真撮影:Shigeta Satoshi (Nacasa&Partners)

 

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