建築構造という仕事②

以前同タイトルの記事を書いてずいぶん時間がたってしまいましたが、そのシリーズという事で第2回とします。ちなみに前回取り上げた際にご紹介した建築家の飯島さんは、昨年より本学の非常勤講師として設計製図の授業を教えてくださっています。ご縁のつながりを感じますね。

さて今回ご紹介するのはその飯島さんと大学時代の同級生である平瀬有人さんの作品です。

 

 

 

こちら佐賀県は鹿島市、肥前浜駅にある駐輪場になります。駐輪場という事で、住まいに必要な要素はそぎ落とされ、構造体がそのまま仕上げになるという事で、構造設計者として計画の初期段階から参加させていただきました。実はこちらの街では、それ以前にも平瀬さんと共に、有名な日本酒、鍋島を醸造されている福千代酒造さんのギャラリーを改修させていただきました。(「富久千代酒造 酒蔵改修ギャラリー」にて是非検索してみてください。)

 

 

富久千代酒造 酒蔵改修ギャラリー

 

 

その際用いた構成は、古い木造建屋の中に、鉄板で作った箱状のスペースを、入れ子状に設置するという事でしたが、その続きという事もあったのか、今回の駐輪場でも同様に、鉄板を用いて作ろうという事になりました。

第1回目では建築家のアイデアを実現するための構造の関りについてお話ししましたので、今回は紙面上に展開された設計図を、実際に形として立ち上げる、制作について触れたいと思います。

建物を作る場合、その素材が鉄や木であったなら、基本的にはばらばらの材料を接合する必要が生じます。特に今回用いる鉄板のような場合、その接合は、主にボルトや溶接といったものになることが一般的です。ボルト接合というのは材料にドリルで孔をあけ、ボルトを通して接合するため、比較的容易な接合形式ではありますが、溶接による接合となると、いろいろと検討すべき事項が増えます。その代表的なことの一つに、溶接熱による鉄板のそり問題があります。鉄を溶かすほどの高温を与える溶接は、その熱の影響で素材を膨張させ、またそれが冷えて固まる際に縮ませるという特徴をもちます。この熱による伸び縮みが、まっすぐな屋根や壁を作ることを実に難しくします。

 

 

 

今回の計画では、一般の建築物に取り付く化粧がない分、構造体に求められる精度は格段に高く、また薄い鉄板で作成していることもありそりも大きく、別途むくり(重力により垂れさがる鉄板の変形量を見込んで、あらかじめ逆にそらせておく)を設けるなどとしたこともあり、製作業者の方と、事前に密な打ち合わせを行い、現場でもたびたび微調整をお願いしました。

 

 

 

良い建物を作るためには設計がいかに優れていても、それを製作する関連業者の方々の腕がないことには実現しません。またこちらの意図をもれなく伝えるコミュニケーションもとても大切になります。AIの進歩は建設業界の仕組みを大きく変える可能性を含んでいるとは思いますが、それでもこのコミュニケーションの重要性は変わることなく残るのではないかなと思います。

(准教授 森部康司)

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