建築構造という仕事

建築設計というと皆さんはどのような職業イメージをもちますか?大抵の人は格好いいあるいは奇抜なデザインをし、世間の注目をあつめる建築家(実際はそういう方ばかりではありませんが)を思い浮かべると思います。しかし実際の建築設計には、意匠設計(いわゆる建築家)、構造設計(数学や力学の知識を使って建築の骨組みの設計を行う)、設備設計(空調や照明の計画を行う)といった多様な設計領域が広がっています。ここでは私の専門分野でもある構造設計について、少しご紹介します。

「田圃の枯山水」 設計:刀禰尚子+飯島敦義

写真は刀禰尚子+飯島敦義による2006年越後妻有 大地の芸術祭出展作品「田圃(たんぼ)の枯山水」です。一面に広がる稲穂の上すれすれに、ガラスの4畳半を浮かべ、庭(田圃)を眺める気持のいい場の提供がなされています。この作品のどこに数学や力学を取り扱う構造が?と思われるかもしれませんが、ちゃんと小さなアイデアが詰め込んであります。

作品のある田圃は、芸術祭の会期が終わればまたもとの田圃に戻ります。つまり田圃を必要以上に荒らす事は厳禁です。また田圃に入った事がある人はわかると思いますが、重いものはズブズブと沈んでしまいます。そんな田圃に鉄とガラスでできた、人が乗れる場所を計画するわけですから、如何に田圃を荒らすことなく沈まない骨組みを設置するかにはアイデアが必要です。また4畳半の場は稲穂の上すれすれにあってほしいという要求から、成長に合わせて伸び縮みもする骨組みでなければなりません。

という事でここで詰め込んだアイデアは、忍者が水の上を歩くために利用する水蜘蛛のように、細い足元にちょっとした板を取り付けた沈まない足と、ねじを切り、稲穂の成長とともに伸縮する柱です。

水蜘蛛の原理と同じように足元に板を取り付ける

脚に注目!太い部分(ケース)を回すと細い柱が伸び縮みする

稲穂の成長に合わせ足を少し伸ばした。脚の一部がまだ錆の無い銀色となっていることが脚が伸びた証。

結果4畳半の展望スペースは、会期中沈むことなく、稲穂の上ギリギリの気持ちの良いスペースを提供し続ける事が出来ました。

このように構造の仕事とは、縁の下の力持ちであると同時に、時としてそのデザインの可否を決定する重要なジャッジを下す奥の深い仕事なのです。 (専任講師:森部康司)

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