木造建築物

日本では、古くから豊富な森林資源を用いて数多くの木造建築物が建てれてきました。そして今なお千年以上前の匠の技を、私達は実在する建築物を通して学ぶ事が出来ます。

その土地にあった合理的な架構が歴史の中で育まれてきた例-飛騨高山の古民家-

大気中の水分を吸収、放出することで体積を変化させ、時には自分自身に割れを生じさせる木材は、生きた材料と言われ、近代建築物に多用される鉄やコンクリートといった均質な材料と比較して、その取り扱いが非常に難しい素材です。そのため先人からの技術や経験値の継承が、今なお重要なウェイトを占める分野でもあります。
こうした木造建築は、では昔から脈々と進化を遂げて来たかと言われれば、実はそうではありません。明治に始まる文明開化は、建築の分野においてもまた、西洋からの建築技術導入という形で進み、美しい木組はレンガの裏に隠蔽され、また関東大震災による木造建築物の倒壊、火災の発生源としての取扱いは、一時的に木造建築を風前の灯火まで追いやりました。
しかし現在、木造建築物は大きな飛躍の可能性を秘めた材料として、再び脚光を浴びています。
その理由の一つには、木造建築物の弱点の一つである、耐火性能に関する研究が進んできた事が挙げられます。そしてもう一つには木造建築物の利用促進を図る法律の整備が進んだ事が挙げられます。今、正にこうした背景を元に、新たな伝統木造の展開や、新しい木構造のあり方が、多くの設計者により試みられています。

球磨県立工業高校管理棟 図書室の建設中の様子

写真は先日熊本県に竣工した、球磨工業高校の管理棟です。熊本県は以前からアートポリスと称した活動により、県内の多数の建築物を、国内外の有名建築家や若手の建築家に発注し、優れた建築作品を、県内に多数ストックし、そうした建築物がやがて豊かな文化を形成するとして今なおアートポリス活動を継続中です。写真の球磨工業高校管理棟も、この一連のプロジェクトの延長線上にある建築物で、ここでは大量の木材を利用した、木の洞窟を作る事をコンセプトに設計が進められました。

廊下にも壁柱が貫入し陰影のある空間ができている

木造建築物といえば、柱や梁といった棒状の材料で構成されるのが一般的ですが、ここでは棒を集積させ、面として利用する工夫をしました。
新しい試みには、新しいアイデアが必要とされ、例えばここでは材料を伸長する為に木ダボ継手というものを用い、部材に生じる様々な力(曲げる、引っ張る、圧縮する)に抵抗するようにしました。

複数のダボ (丸棒)が貫入することで互いの部材を一体化する

バラバラな木材が一体化され、巨大な面として迫り来る内部空間は、来訪者からも好評のようです。
皆さんももしこうした木材の持つ可能性や新しい空間表現に興味を覚えたなら、書籍やインターネットで情報を収集し、実際に木造建築物を訪ね歩いてみてはどうでしょうか。 

(専任講師:森部 康司)

完成後の図書室の様子

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