創造的休暇を過ごすために vol.21

2020,05.11 プロダクト教員紹介

プロダクトコース非常勤講師の佐原です。

昨日カリフォルニアから、インスタグラムで見た絵のプリントを売ってほしいというメールが来ました。
初めてのやりとりでもいきなり「Hi Telly」だよ。
価格、サイズ、発送コスト、支払い方法などを詰め、10分ほどで「契約」はまとまりました。

そのくらいならなんとかなる程度の私の英語のお勉強は、
このポケットサイズの旅行用英会話ガイド本でスタートしました。

「SPEAK ENGLISH?」1000万人の海外旅行英会話/交通公社 1975年
(いまはもう絶版でしょうが、英会話ガイド本全体のことと思って下さい。)

1970年代中期。23歳でフリーのイラストレーターになったころ、
アメリカ西海岸文化のブームがおこりました。(メディアによって作られたともいえる)
アウトドアを中心にした「もの」文化と、UCLA、USC などカリフォルニアのキャンパスライフが
日本の若者には新鮮でした。ジョギングブームでNIKEが誕生したのもそのころです。

それに便乗してある雑誌がアメリカ西海岸のガイドブックを企画。レギュラーページを持っていた私は
「旅費はギャラと相殺でいいから」と編集長に直談判して取材陣に混ぜてもらいました。
これが私の初海外、初アメリカ、初飛行機搭乗。
羽田空港(成田はまだ建設中だった)の国際線出発ロビーで買ったのがこの本です。

空港からホテル、観光地、病院や郵便局、警察まで、
旅先で役立ちそうなやりとりがたくさん載っています。カタカナまでふってある。
ハワイ経由の全行程14~5時間、ひたすらこの本を読み続けたおかげでけっこう暗記してしまい、
向こうに着いた時にはなんとか話せるようになっていました。
いまならGoogle翻訳でことたりるんでしょうが、
書く読む、しゃべる、といったフィジカル面がないと言葉は身に付かないと思います。

ことばを覚える方法論はいろいろありますが、
大事なのは「伝えたいことがある」ということです。それが趣味であれ仕事であれ。
伝えたいことがあるということが相手に伝わればむこうは一生懸命聞いてくれます。
それさえあれば、カタカナ英語上等。RとLのちがい?thの発音?そんなことはどうでもいい。
くだらないことを気にして黙ってたら何も伝わらない。
ま、それは英語以前の話。日本語でもそうですけどね・・。

西海岸の本の仕事は、けっきょくたくさんのレポート記事と表紙の絵を描くことになり、
「旅費と相殺」は黒字で終わりました。めでたしめでたし。
汚れてくたびれたこの本はフリーになったときの記念碑として、何度かの断捨離危機をかいくぐり、
いまでも本棚の片隅に生き残っています。

佐原輝夫(環境デザイン学科 非常勤講師)

 

〒154-8533 東京都世田谷区太子堂1-7-57

© Showa Women's University