銅版画で綴る近代建築の魅力 その13

2021,02.12 建築/インテリア教員紹介

国会議事堂を見学した人は多くいることと思います。議事堂は昭和11(1936)年に建てられたのですが、その建築史は、第一回帝国議会を開催した明治23(1890)年に遡ります。当時は、官庁建築の設計を「お雇い外国人」に依頼していた時代でした。その任に応えたのがドイツ人建築家エンデ&ベックマンで、彼らは壮麗な石造による議事堂案を提案しました。しかし、工期ならびに財政上の問題でそれは実施に至りませんでした。その代替として、エンデ&ベックマンは短期間に経済的に建てられる木造による議事堂を再提案し、それは第一次仮議事堂と呼ばれました。その後、仮議事堂は二度火災に遭い、その都度建て替えられました。日清戦争時(1894)の広島に帝国議会用に急遽造られた建物を含めると、仮議事堂は計4棟建てられ、すべて木造でした。現在の議事堂は5棟目で、鉄骨鉄筋コンクリート造となり、全面に花崗岩の石貼りが施されています。

国会議事堂の特徴はどこにあると思いますか。国会は二院制なので、建物の両翼に議場があります。正面向って右が参議院、左が衆議院です。中央に吹抜けの大きな玄関ホールを持ち、そこから奥に伸びる中央階段の先に天皇陛下の御休所があります。さらに、議場内では、扇型に配された議席に対面してひな壇(大臣席など)を設けています。

実はこれらの議事堂特有の構成は、最初の国会議事堂(仮議事堂)に示されていました。現在の建物は昭和の建築ですが、第一次仮議事堂以後130年の歴史を積み重ねているのです。その最初の仮議事堂の図面を、本学図書館が貴重図書として所蔵しています。機会がありましたらご覧ください。

(教授 堀内正昭)

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