紬かけつぎ店 岡野晃兵氏の講義

2025,07.18 ファッション

7月 ファッションデザインマネジメントコースの「テキスタイル論」の授業で、紬かけつぎ店の岡野晃兵先生をお迎えし、かけつぎのお話を伺いました。

かけつぎとは、衣類にできた傷や虫穴を、元の近い状態へ修復する技術のことです。
同製品の生地や糸を使用し、手作業のみで修復していくため、非常に高度な技術が必要です。
修理の方法はさまざまなものがありますが、このかけつぎという方法は最もきれいに仕上がる方法だと言われています。

<岡野先生プロフィール>
岡野先生は信州大学繊維学部応用生物科学学科をご卒業後、畜産物の飼料メーカーで営業を勤めていました。そのとき偶然テレビ番組で見かけたかけつぎという仕事を知り、感銘を受けて一念発起し、かけつぎ専門店へ転職しました。かけつぎ専門店では2年間勤務し、その後先輩職人と一緒に独立、「紬かけつぎ店」を設立されました。

<紬かけつぎ店の紹介>
2019年4月15日に「繊維の街」と呼ばれる愛知県一宮市にて開業しました。従業員数は2025年5月時点で5人だそうです。洋服全般やニット、着物など、さまざまな衣類の修理を行っています。
かけつぎといえば職人さんが活躍するようなクローズドな印象の業界ですが、岡野先生はもっとかけつぎを広めたいという思いから、広報活動にも力を入れているそうです。
親子体験教室の開催や、お祭りでの実演、大学での講義の他、メディアに出演するなど、積極的に活動されています。
SNSでの発信にも力を入れており、海外の方向けに更新しているインスタグラムの@tsumugi_kaketsugiは、フォロワー数が5.7万人もいらっしゃいます。
日本のかけつぎ技術は世界でもトップクラスだと言われているため、世界中から注目されているそうです。

<かけつぎ紹介>
講義では、実際にかけつぎが施された衣類を見せていただきました。
どこに穴が空いていたのかと思うほど、大変きれいに修理された衣類に、学生たちは驚いた様子でした。

講義の様子

<かけつぎ演習>
岡野先生の指導の下、学生たちがかけつぎを体験しました。穴が空いた平織の布に、布の糸を織り込むことで修理しました。
はじめてのことで苦戦する学生もいましたが、岡野先生の丁寧なご指導の元、全員がかけつぎの技術を学ぶことができました。

岡野先生から直接指導を受ける学生

<かけつぎを体験した学生たちのコメント>
今回の講義を受けて、学生たちからさまざまなコメントが寄せられました。その中の一部をご紹介します。

・かけつぎはただ衣服を修復する作業ではなく、お客さんの大切な思い出や気持ちを繋げる、心のこもった仕事でもあると感じた。そして、その仕上がりがきれいに完成したときの達成感や、お客さんの喜びがダイレクトに伝わるという点で、やりがいのある職業だと思った。

・日本が世界トップレベルの技術を誇るこの伝統技術が、SDGsにも貢献できるという点で、非常に大きな可能性を感じた。手作業の持つ力や、衣類を大切にする心の大切さをあらためて実感した。

・かけつぎは、服が切れても着れるようにできるので地球に優しく、今の時代にあった技術だと感じた。この技術を広めて多くの人に知って欲しい。

・岡野先生は大学を卒業してからかけつぎをはじめたと聞いて、自分自身の行動次第で可能性は無限大だと感じた。キャリア的な面でも学べることが多くてとても身になった講義だった。

・例え始めるのが遅くて周りと比べてしまうようなことがあっても、誰よりもできる自信やな熱意があればかならず結果は帰ってきて夢を叶えることができるのだと、お話を伺い感じられ、私自身背中を押してもらえた。

学生が行ったかけつぎ(左:かけつぎ前、右:かけつぎ後)

学生たちは今回の講義を通し、かけつぎという技術を学んだだけでなく、岡野先生のキャリア形成にも関心を持つ様子がうかがえました。
これから社会に向かって羽ばたく学生たちにとって、とても勇気をもらえる時間となりました。

岡野先生、ありがとうございました!

紬かけつぎ店のインスタグラムはこちら
https://www.instagram.com/tsumugi_kaketsugi/

紬かけつぎ店のホームページはこちら
https://kaketsugi.jp/

(テキスタイル論 担当教員:木村知世、下村久美子)

〒154-8533 東京都世田谷区太子堂1-7-57

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