
このたび、デザインしたアルミ製額縁の「CUT」が、世界的なデザイン賞である iF DESIGN AWARD 2026 を受賞しました。

iF DESIGN AWARD は、1953年にドイツで創設された国際的なデザイン賞で、毎年世界中から1万件を超える応募が集まります。プロダクト、建築、コミュニケーションなど多岐にわたる分野のデザインが、国際的な専門家によって審査されます。世界的に広く認知されている賞であり、受賞は「世界基準で評価されたデザイン」であることを意味します。
今回の製品を説明すると、「CUT」は、アルミニウムフレームのあり方を改めて考えるプロダクトです。一般的にフレームは作品を“支える脇役”の存在ですが、CUTはその構造や素材そのものにもう一度目を向けました。内側に向かってシャープにカットされた三角形の断面は、見た目の美しさだけでなく、フレームとしての強度を高める役割も担っています。そしてその形状は、自然と視線を中央の作品へと導く構造にもなっています。
また、アルミはとても柔らかい素材のため通常は表面処理を行います。ただしこのCUTの一つには表面に仕上げを施さず、アルミニウム本来の質感を活かしているものがあります。このことによって、通常よりも傷がつきやすいのですが、使う中で生まれる細かな傷や経年変化をポジティブにとらえ、時間とともに表情を重ねていくことを目的としています。完成された状態で固定されるのではなく、作品や使い手とともに少しずつ変化していく。また素材そのもののほうが、リサイクルするときも負荷が低くすみます。その姿勢もまた、評価されたポイントのひとつでした。

今回の受賞は、単に「きれいな形をつくった」ということではなく、素材への眼差し、構造への思考、そして鑑賞体験までを含めてデザインしている点が国際的に認められた結果だと感じています。
昨今のデザインでは、見た目のインパクトだけではなく、「なぜその形なのか」「素材をどう解釈しているか」「どんな体験を生み出しているか」「環境へはどのように配慮しているのか」といった背景まで問われます。デザインとは単なる造形ではなく、思考の積み重ねであることを、改めて示してくれる機会になったかと思います。
日々の演習や制作の中で向き合っている素材の扱い方や細部へのこだわりが、世界の評価基準ともつながっている。そう考えると、日常の制作が少し違って見えてくるかもしれません。
プロダクトデザインコース 特命准教授 三星安澄
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